日本人形と彼女
8月中旬 とある土曜日
<自宅>
俺は今、1年近く付き合っている彼女と同棲している。
俺「今日の午後から雨だってさ」
俺「どっかいきたいところとかあんの?」
彼女「俺君の行きたいところに行こう、、、」
俺「特にないから家にいよう、雨だし、、、」
家でのんびりすることにした。
しかしながら、午後4時になっても雨は降らなかった。
俺「雨降らなかったな」
彼女「そうだね、、、」
俺「ゲーセンでもいくか」
彼女「うん、、、」
あまりにも暇を持て余していたため
夕方からゲームセンターに行くことにした。
俺は財布と車のカギを取り、彼女は長袖の服に着替えた。
ちなみに、ゲーセンまでは歩いていこうとすると30分ほどかかる。
真夏に30分の散歩はさすがに身体にこたえる。
だから今回は車で行くことにしたってわけさ。
<ゲームセンター>
ゲームセンターにつくと、そこには学生らしき若いやつらが4人いた。
世間では夏休み、もっと人がいると思ったが少ないことにこしたことはない。
お菓子やフィギュアのクレーンゲーム、シューティングやカートゲーム、
プリクラ、オタク用足しの音ゲーなんかもここには豊富にそろっている。
俺はさっそくクレーンゲームでスマホ用充電器にでも狙いを定める。
「そこだっ!いけっ!」
「くそ!!!」
しかし、1,000円近く使っても一向に取れる気配はなかった。
彼女は相変わらず口数が少ない。イラついた俺は別の獲物を探していた。
するとなにかと目が合った。
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日本人形だ。
ふつうゲームセンターに日本人形なんておいてあるか?
俺は目を疑ったが、彼女がじっとソレを見つめていた。
普段、何にも関心を持たない彼女が見入ってしまう。
俺は、その瞬間、ソレを手に入れようと心に誓った。
お金を入れ、アームを動かす。
人形の真上まできたアームが下がる。
しかし、アームは閉じなかった。
俺「あ!?今閉じなかったよな」
俺「お前見てたよな?」
彼女「う、うん。なんでだろう。」
さっきの充電器で腹が立っていた俺は台に蹴りをいれた。
(ドンッ)
鈍い音が店に響いた。
俺「おい、そこのおまえ。この機械壊れてるんじゃねぇか?」
俺「どういうことなんだよ」
店員はうつむいたまま答える
店員「すみません。点検しますので少しお待ちください」
2分後
店員「なんの異常も感知できませんでした。もう一度試してみてもらえませんか?」
俺は金を入れ再度試した。
再びアームが人形の頭付近までくる。
アームは閉じなかった。
俺は頭の中の何かがキレたのが分かった。
「おい、どうなってんだよ。おちょくってんのか?」
「こりゃ返金だけでは済まないぜ。」
「どうしてくれるんですかーーー?」
そうしているとアームが勝手に動き出した。
もちろん金は入れてないし
誰も操作レバーに触れていない。
アームが人形の頭の上まで来た。
すると
(ガシッ)
アームが人形の首を締め上げるように閉じて人形を出口まで運んだ。
俺「お、おい、どうなってるんだよ」
彼女「」
店員「」
俺が取り出し口から人形に触れたときなにか違和感を感じた。
そして、取り出した人形に目をやると、
その人形の目から赤い涙がこぼれていた。
俺は反射的にソレを振り払った。
「うわっ、なんだこれ。きもちわりぃ」
ソレは勢いよく壁にたたきつけられた。
店員はうつむいていて何を考えているのかわからない。
ソレを拾いに向かう彼女。
ソレを床から拾い上げた彼女は背を向けたまま固まっていた。
俺「もういい。早く来い、帰るぞ」
と彼女の腕をつかむと同時に彼女の顔を見た。
鼻は折れ顔全体が赤く腫れあがっていた。
顔面を強打したかのようだった。
彼女「・・・なんでそんなことするの」
小さな声で俺にたしかにそういった。
そして俺は見てしまった。
ソレが彼女の袖をがっちりとつかんでいるところを。
俺は怖くなり車に向かった。
気が付かなかったのがウソみたいに外は大雨だった。
彼女を待とうと思ったがここまで怖い体験をしてしまった俺は
別れを決意し、家に一人帰った。
<自宅>
家についた俺はすぐシャワーを浴び、ベッドに横になった。
彼女の服や化粧品が俺の目にふと入る。
俺は彼女にLINEを送った。
LINE ー俺「今、どこのいる」
すると外から通知音が聞こえてきた。
俺はもう一度メッセージを飛ばす。
LINE ー俺「家の前にいるのか」
既読はつかないが確かに通知音は玄関先から聞こえてくる。
俺は玄関に行き扉をあける。
するとそこには、
びしょびしょに濡れた彼女が”ソレ”を大事そうに抱えて立っている。
俺は固まった。
俺「お、おい。大丈夫かよ」
彼女「」
俺「なんだよ、無視か?」
彼女「」
俺が何を言っても彼女は無言のまま浴室に向かった。
まあ無理もない。おいていかれのだから。
俺は彼女がシャワーを浴びてる間に
別れるシチュエーションを考ることにした。
すると、未登録の電話番号から電話がかかってきた。
この番号は、おそらく公衆電話だろう。
俺「もしもし、だれ?」
俺「おい、聞こえてんのか?」
なにかかすかに音が聞こえる。
よく聞こえないため耳を澄ませる。
???「俺君・・・ごめんね」
ここだけなぜかはっきり聞こえた。
そして、ここで電話はきれた。
そして俺は
謎の電話の意味を考えるより俺は浴室に向かっていた。
なぜならそれは彼女の声だったからだ。
<浴室>
浴室ではシャワーの音が聞こえる。
カギはかけていないみたいだ。
中を覗き見るとそこに人の気配はなかった。
俺は無言のままおそるおそる浴室に入る。
するとそこには、
頭がグシャグシャになった”ソレ”があった。
俺は怖くなりベッドで布団にくるまっった。
疲れもありすぐに眠りに落ちた。
<次の日>
翌日、ニュースには橋から女が飛び降り自殺とあった。俺は全てを察した。
【後付け】
彼女は俺から暴力を振るわれていた。
=>8月の夕方から長袖で出かける(痣隠し)
=>俺の暴力的な性格
彼女は日本人形を羨んだ
=>きれいで大事にされる
彼女と人形の意識がリンクする
=>アームが閉じない(彼への恐怖)
=>取られたときの赤い涙(日々の辛さ)
身体までリンクする
=>人形が壁にぶつり彼女が負傷
人形に彼女の精神が入る
=>家にはやく帰らなければ暴力ふるわれる
=>家まで30分の距離を、男性の水シャワーが終わるより
早いスピードで帰宅、待機していた
=>タクシーなら濡れてない
彼女の最後と人形の最後
=>シャワーは雨を暗示している
=>肉体もリンクしている
以上で僕が深夜に眠れなくて考えた
怪談話を終わりたいと思います!!!
最後まで見てくれたみんな!ありがとう!!!